離婚
離婚をはじめとする夫婦関係にまつわるトラブルについて
はじめに~弁護士への相談のしかた~
夫婦関係のトラブルに、弁護士が関わるという場面は、テレビドラマやワイドショーなどでもご覧になることが少なくないと思われます。たとえば、テレビドラマで離婚事件の裁判のシーンなどは、よく目にするところですね。多くの方々が、弁護士とはどんな仕事をする人々なのかよくわからない、と感じておられるであろう中、弁護士のイメージというのは、こういったドラマで描かれた部分にあるのではないでしょうか。それ故、ドラマなどの印象から、弁護士に頼むとすぐに裁判を起こしたりするのではないか、と受け止められがちかもしれません。
たしかに、トラブルの内容によっては、すぐに裁判を起こすという場合も、ないとは言えません。しかし、トラブルの内容はさまざまであり、どのようなやり方を取るのがよいのかも、そのトラブルの内容によって違います。
まず申し上げたいのは、「夫婦関係のトラブルのうまい解決のためには、なるべく早い段階で、弁護士に相談してみてください。」ということです。
夫婦関係のトラブルと弁護士~どんなときに弁護士に相談するの?~
夫婦関係のトラブルにも、さまざまなものがあります。
- 夫婦でいろいろなことの話し合いがうまくゆかない、面と向かうと冷静に話ができない、相手のほうが弁が立ち、いつも相手のペースになってしまい、言いたいことが言えなくなってしまう等々、本来夫婦で対等に話し合うべきことができていない、とにかく話し合いをしたい。
- 夫が、あるいは妻が、浮気をしているらしい(あるいは浮気を認めた)、どうしても許すことができないので離婚したいが、浮気の相手にもお灸をすえたい。
- 夫や妻から長年暴力を振るわれ、けがもさせられている、家の中を壊されたりもしている、あるいは体への暴力はない(ように思う)けれども、年中自分をおとしめたりばかにするような、また下に見るような暴言を浴びせられ続けている。子供たちもそのような様子をいつも目にしており、将来が心配である。
- 生活費をきちんと入れてくれない、あるいは仕事をしょっちゅう変わり、生活が安定しない、あまりにやりくりが苦しいので、相手に内緒で借金をしてしまった。もしばれたら大変なことになってしまう。
ここに挙げたのは、ほんの一部ですが、こういったトラブルのどの場合でも、なるべく早い段階で、弁護士に相談をされることをお勧めします。
夫婦関係のトラブルで弁護士に相談することのメリットとは?
弁護士に早めに相談することのメリットとしては、次のようなことがあります。
- 自分のトラブルが、法律的にどのような意味を持つものなのかがわかり、場合によっては、自分に決して落ち度がない、あるいは自分は不利ではないということを知り、不安を取り除くことが出来る。
- トラブルの解決のために、これからどのようなことができるのか、どのような手続きを取ればよいのか、そのためにどのような準備をすべきか、証拠としてどのようなものを取っておくべきか等を早い段階で知ることができる。
- 弁護士とのつながりができて、今後さらに必要なことがあれば、弁護士に直接トラブル解決を頼みやすくなる。
夫婦関係のトラブルで、もっとも多いのは、言うまでもなく離婚です。この離婚については、裁判所を通さずに、夫婦間の話し合いで行う場合(協議離婚)が一番多いのですが、子供の親権のこと、養育費のこと、また財産分与(財産分け)や慰謝料のこと等について、きちんと話し合いを経ないで、あるいは相手の言われるままにしてしまっているケースが多いということを、私たち弁護士は普段の相談の中で感じています。法律的には求めることのできる請求もせずに、不利な状況の中で我慢を強いられている人々。この人たちが、離婚をする前に弁護士に相談してくれていたら、もっと違った解決ができただろうに、こんなことを私たちは日常的に感じているのです。
上に述べたように、「夫婦関係がうまくゆかない。どうしたらいいのだろう。」と感じ、悩み始めた段階で、早めに弁護士に相談していただければ、こういった問題は避けられるかもしれませんし、またより適切な解決、またそのための準備ができることもあるかもしれません。そして、一度相談をして頂ければ、今度何かあった場合に、その弁護士に再度相談を持ちかけ、対応を頼むこともやりやすくなります。
離婚事件で注意すべきこととは?
一口に「離婚事件」と言いましても、上に述べたように、いろいろなパターンがあります。そして、そのそれぞれについて、解決しなければいけない問題があります。
ただ、一般に、注意しなければならない点を、いくつかご説明します。
1離婚事件の解決は、交渉→調停→訴訟(裁判)の順
最初のほうで述べたように、離婚事件だからと言って、何が何でも「訴訟」をする、というわけではありません。まずは、話し合いでの解決をこころみ、それがだめなら、裁判所での「調停」という話し合いの手続き、それでもダメな場合、「訴訟」をするということになります。この「調停」は、「訴訟」の前に必ずやるというように法律で定められています(調停前置主義)
弁護士は、ご相談を受け、その後相談内容を引き受ける場合、相談された方のご意向をよく聞き取りながら、まず「交渉」で行くべきか、「調停」を起こすべきか、それとも「訴訟」を起こすべきかを判断します。
「交渉」で行くべき、ということになれば、弁護士が相手に手紙を出したり等連絡を入れ、ご相談された方の代弁者・代理人として交渉します。この場合、交渉は原則としてもっぱら弁護士がやることになりますから、弁護士に依頼された方は、相手方といろいろ直接のやりとりをしなくてもよくなります(「調停」や「訴訟」で行くことになった場合も、弁護士が代理人として対応してゆくことはもちろんです。ただし、調停の場合は、裁判所の期日に弁護士とともに出席していただくことが多いと思われます。)。
2離婚事件で決めなければならないこと、決めることができること
親権・養育費
お子さんがおられる夫婦の場合、お子さんの親権を離婚する夫婦のどちらが取るかを決めないと、離婚することができません。話し合いで決められない場合は、家庭裁判所に調停を起こし、調査官という専門的知識を持つ方の助言を受けながら、親権をどちらが取るべきかを決めることになります。
また、お子さんの養育のための「養育費」を、夫婦のうちお子さんを養育する側からもう一方へ請求することができます。これは、お互いの収入がどの程度かによって決まることになります。
財産分与
結婚生活がある程度の期間あり、その間にある程度の財産ができた、というような場合には、「財産分与」を求めることができる場合があります。ただ、これについては、プラスの財産だけでなくマイナスの財産(例えば住宅ローン)はないか、お互いの預貯金がどのくらいあるかを明らかにできるか、等の問題があり、こういった点を細かく調べてみる必要があります。
慰謝料
結婚生活を壊すきっかけとなった事情で、夫婦の一方が精神的に苦痛を受けた場合、「慰謝料」を請求できる場合があります(なお、よくこの「慰謝料」を「手切れ金」と混同される方がおられますが、「慰謝料」とはあくまでも、夫婦の一方に「不法行為」があり、それにより他方が精神的損害を受けた、あるいは結婚生活が破壊された、という場合に考えることとなるので、とにかく別れたいという場合に渡す「手切れ金」とは異なります。)。
ドメスティックバイオレンス(夫婦間暴力)と「保護命令」
夫婦の一方による暴力があまりにひどいような場合には、早い段階でその暴力から逃れるため、家を出る必要がある場合があります(暴言の場合にも認められることあり)。この場合、地方裁判所に「保護命令」の申し立てをなし、暴力を振るう側が振るわれる側に接触することを禁止したり、もともと同居していた家から退去を命ずることとなります。暴力を振るわれていた方は、この命令に守られ、安全な場所へ避難して、そのうえで離婚へ向けた手続きを踏んでゆくこととなります。